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葛飾区自転車店(サイクルショップ)ウッドハートスポーツは自転車とカヌーのお店です。足立区墨田区江戸川区八潮市三郷市からも近い下町の店。サイクリング、カヌースクール、ラフティング実施中
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ゴムゾーリで漕いだ! 歩いた!
無手勝流チャリ旅
『北海道の輪郭をなぞる旅 』前編
04.7.27〜8.19(7/26出発 8/20帰着)

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[1日目]
7/27 苫小牧〜登別〜室蘭(ライダーハウス白鳥の家)無料
    80.9km(当日走行距離)
13時半、チャリ2台、フェリーから一番先に降ろしてもらいスタート。苫小牧はすごい霧で視界最悪。もう一人のチャリダーおっさんは白老でキャンプというが、30kmそこそこしかない。これじゃ、いくらなんでも近すぎる。おれは行ける所まで走ってみようと決断し、室蘭街道に入って間もなくおっチャリダーに別れを告げる。この先、キャンプ場がないのは承知。いざとなったらゲリラキャンプ(キャンプ指定地以外でのテント泊)だ。どうにでもならあな。

◆フェリーの船倉でのこと、ライダーやドライバーたちがたくさん集まってきて2台のチャリを取り囲み「重いよ、こんなんで北海道を走んのかよ!」などと興味津々。おれたちが降りる時、なぜか一斉に拍手がわき起こった。いいスタートじゃん。 ◆霧の中、おれを追い抜いて行くクルマがあっという間に見えなくなる。こりゃヤバイとトンネルを想定して用意してきた保安ベストを着る。トンネル以外でも役に立つ。 ◆北海道の夏の名物、ライダーとチャリダーの間で交わすサインの交換がさっそくはじまる。バイクがチャリを追い抜きざまVサインやガッツポーズでチャリを励ます合図だ。チャリも当然それに応えて片手を挙げる。いいもんだ。フェリーで一緒だった3人のライダーもおれの真横で「がんばって」と大声で叫び、すっとんで行った。 ◆シューズは30分で脱いだ。スポーツサンダルも30分で脱いだ。ゴムゾーリが一番しっくりする。これで漕ぐとする。 ◆登別でセイコーマートの会員になる。北海道でコンビニといえばこれだ。とにかく安いし、どこにでもある。これから世話になりそうだ。 ◆50kmくらい走った頃、宿泊地をマジに考える。道端であぐらをかき地図を眺めていると、おばちゃんが声をかけてきた。「困ってるの?」んなに困っちゃいないがこの親切は嬉しい。北海道の人は旅人に慣れているからだろう。派出所とかアウトドア好きの若者のいるGSとかを教えてくれた  ◆GSで周辺状況を聞くが、このあたりはキャンプ場不毛地帯のようだ。ライダーハウスはあまり好みではないが、緊急時には避難するつもりでいた。初日から緊急事態だな。白老まで戻る気はさらさらない。となると室蘭まで行くっきゃない。 ◆ライダーハウス白鳥の家を探しながら走ったら80km走になった。たった半日なのに。 ◆怪し気なライダーハウスである。旅人というより、ここに住み着いている風のおっさん二人、やあやあとおれを迎えてくれた。こういうの苦手だな。どっかでゲリラキャンプをと思ったが、もう辺りは暗いし夜は大雨の予報だという。おまけに暑い。とりあえず泊まってみっか。無料だ。

[2日目]
7/28 室蘭〜伊達〜長万部(長万部公園キャンプ場)500円
    103.7km 184.6km(積算距離)
昨夜、だいぶ雨が降ったようだ。屋根をたたく雨音は覚えている。悪くない目覚めだ。6時スタート。雨は止んだが霧は昨日の苫小牧以上。真っ先に地球岬(正式にはチキウ岬というらしい)に向かう。いきなり3km、とんでもない登りだ。漕ぎきれない。押し押し。岬からは水平線が曲線(曲面)で見えるといわれるが、海どころか、ここに在るはずの灯台さえ見えない。最悪。昨日走った道を避け、イタンキ浜方面へ降りる。鳴る砂で有名な海岸だ。さて、本日のハイライトというか、チャリ乗りの難所といわれる礼文華(れぶんげ)峠が待ちうけている。

◆礼文華峠はアップダウンと同時にトンネルがやたら多い。当然、保安ベストを着たまま走行。で後からすぐにクルマが来ないのを見計らいダッシュする。この国道は苫小牧、室蘭と函館方面を結ぶ、いわゆる産業道路だ。クルマは途切れない。 ◆最悪のトンネルは登っている、曲がっている、(路面が)荒れている、である。さらに付け加えるなら所々灯りが切れている、である。この4悪条件がすべて備わっているトンネルが幾つもあった。 ◆豊浦あたりで飯をと思っていたが、店など全く見当たらない。あやうくハンガーノック。常に食料は2食分持つことを学んだ。 ◆長万部(おしゃまんべ)で名物といわれるカニメシを食い一息つくがたいしたもんではない。カニはカニの姿があってこそカニだ。 ◆長万部公園キャンプ場はきれい過ぎる。芝生はしっかり手入れされ、池には滝も落ちている。やり過ぎだ。だから500円か。自然のままでいい。 ◆テントはどこにでも張り放題。チャリダーは朝が早いので水場とトイレの近くにテントを設営する。やはり一国一城の主はいいな。 ◆おれがテントを張り終えると、一人のチャリダーがやって来た。どうやらおれとは逆廻りでの北海道一周さんらしい。礼文華峠を明日突破するのでおれに道路状況を聞きに来たのだ。保安ベストのことを話すと、同じものを買いに行くといって閉店直前のホームセンターへすっとんで行った。旅人(たびにん)さんはカッコじゃないよ。命あってのものだねだ。

[3日目]
7/29 長万部〜鹿部〜恵山(道の駅キャンプ場)350円
    144.3km 328.9km
5時少し前に起きて湯を沸かしていると、もう若いチャリダーのテントが撤収されている。そのうち顔を洗って戻ってくるや出発するという。まあまあとコーヒーをゴチする。おれも見習わなきゃ。今朝もすごい霧。でも涼しくて気持ちいいな。砂原(さわら)の道の駅で一服してると、見知らぬおっさんが寄って来た。昨日おれが豊浦の駐車帯で休んでいる時、同じ所にいたという。「チャリってすごいな、もうこんな所まで来てるんだ」としきりに感心する。「トンネルでは、あれは着てたほうがいいよ」保安ベストのことである。チャリダーはクルマが恐いが、クルマはチャリダーが見えにくく、やはり恐いという。保安ベストの効果が実証されたようだ。

◆恵山(えさん)の道の駅にはキャンプ場が併設されている。コンビニも目の前にある。文句なし(風呂が足りないけど)。テントの設営をどこにしようかときょろきょろしてると、一人の男が手を振っている。近くにチャリがある。チャリダーだったら情報交換だ。けど、少し様子が違う。ビデオカメラを回しているようだ。近付くと、「失礼しました」といいながら名刺を差し出してくる。自転車旅行の映像を集め、映画らしきものに仕立てるつもりという。個人(後でわかったことだが、40才のチャリ乗りで仕事はエロ映画の監督らしい)のライフワークのようだ。取材である。うっとおしいので、やや離れた所にテントを張るが、男は笑顔を振りまきながら、おれから離れない。 ◆おれのメーターをのぞき「144kmって今日の走行ですか、私は一日でこんなに走れない。まいったな」などとほざき、おれをノセにかかる。 ◆チャリの映画など、どうせマイナーもいいとこだとタカをくくり、昨夜口を開けたばかりのバーボンのハーフボトルを飲みながら男と話す。 ◆酔ってきた。「いまカメラ回ってますが、いいすか」と言われても、もうどーでもいいやという気になってくる。話した内容もほとんど覚えていない。もう1本バーボンを買いに行ったのは覚えているが。気がついたら、上半身をテントに突っ込んで寝ていた。

[4日目]
7/30 恵山〜函館〜知内(農村公園キャンプ場)無料
    98.6km 427.5km
撤収を終え顔を洗ってチャリに戻ると、昨夜の男が起きてきた。「正しいチャリダーですね、とても真似できない」などと今朝も調子いい。ともあれ5時過ぎスタート。15分ほど走ると若いチャリダーとすれ違う。そう、チャリダーの朝は早いのだ。8時頃、函館を通過。街中は走りずらいし、特に街に用はない。海沿いを淡々と進むが、昨日の144km走がきいたのか、宿酔いなのか、ちと脚が重い。いつもよりゆっくりペースで昼過ぎにようやく知内(しりうち)の道の駅に着く。走行距離はまだ100km未満、地図をよくよく読むがここから先しばらくキャンプ場がない。無料の農村公園キャンプ場に行きテントやフライ、シュラフをぱりっぱりに乾かし、昼寝でもしようと決める。道の駅の食堂で飯を食い、コンビニの場所を聞くがかなり遠いようだ。常に2食分の食料を持参するという食料調達の原則を忘れてた。ウエイトレスのおねーちゃんになんとかならないかと言うと、厨房へ入ってって調理人に聞いてみてくれた。おりぎりなら用意できるという。しめた。梅干しと辛味噌の入った2食分のおにぎりとおしんこセットで450円。旅人価格だろう。こんなに安くてほんとにいいのか。

◆キャンプ場にマットを敷き、レストランで調達したビールを飲んで昼寝してると、二人のチャリダーが到着していた。若いチャリダーがおれの走行ペースを聞くと、「おじさん、すげえっすね」と驚く。「おじさんの身体ってスポーツっすね」とわけのわからんこともいう。その後もおじさんおじさんを連呼しやがる。 ◆チャリダーの足元を見ると片方のスポーツサンダルの足首部分がちょん切れ、出来の悪いスリッパ状態である。あげくにゴムゾーリを買う余裕もないと泣きが入る。おれの荷台には初日に30分履いただけのシューズがくくりつけてある。これ履いてみろというとドンピシャ。やるよ、というと超満面の笑み。可愛いもんだ。おじさんおじさんを連発してくれたお礼である。

[5日目]
7/31 知内〜松前〜乙部(道の駅ゲリラキャンプ)無料
    128.1km 555.6km
そこそこの登りからはじまった。けっこーしぶとく登る。で福島町への下りが凄かった。3km以上続いたと思うが、がんがん下る。朝っばらから時速50km強のスピードを堪能する。おれのチャリには20kg程度の荷が積んであり、いったん加速すると速い速い。北海道最南端の白神岬で朝食。レストランで作ってもらったおにぎりはコンビニのよりはるかに旨いっ。トンネル地獄がまたはじまった。道南はトンネルが多いことは3年前にクルマで走ってわかっちゃいるが、アップダウンの激しさは予想以上だ。積丹を越えるまで続くのだろう。

◆松前の小さな峠を越えた所にパークゴルフ場があり、ここでボトル2本の水を補給。すると、向かいの蕎麦屋のおばちゃんがおれを呼ぶ。「麦茶を入れてきなさい」と言う。おれは喜んでそれをボトルに詰め替えてると今度は氷を持ってきた。嬉しいおまけだ。なんという親切。最高のエンジン冷却水だ。ありがとう。 ◆今日は風呂の日だ、誰が決めたわけでもないが。2日風呂に入っていない。温泉ではないが乙部(おとべ)町に銭湯があるという情報。探しながら到着すると、休業日だ。まいったなぁと思ってると、おっさんが出てきた。「風呂はぬるいけどシャワーなら出るよ。今日は暑いからおれも浴びよう。一緒に入るか?」風呂屋のオーナーである。だだっ広い銭湯におっさん二人。この世の極楽である。あげくに金はいらないとくる。 ◆続きがある。今夜はどこに泊まるのかと聞くので、道の駅でゲリラキャンプを張ると答えると、息子の名を呼ぶ。「このお方のチャリを軽トラの荷台に積んで、道の駅までひとっ走り行ってこい」というではないか。「最後の坂はキツイよ、せっかくの湯上がりに大汗かいちゃ可哀想だ」というのだ。一瞬、おれはその言葉に甘えようと思った。けど、あと6.5kmとはいえ、ここで軽トラに便乗したら、おれの『北海道の輪郭をなぞる旅』が歯っ欠けになる。一生懸命それを説明し銭湯を後にした。ちと泣いたね、嬉しくてさ。 ◆キャンプ場が併設されてない道の駅でのゲリラキャンプには暗黙のルールがある。それは、道の駅の営業?が済んだ後、他の利用者の邪魔にならない場所にテントを設営するというものだ。 ◆腰が痛い。はじめはそう思っていた。道の駅にはまだ従業員がいる。チャリの横に寝転んでいると、いろんな人がチャリ旅の話を聞きにやって来る。つくり笑顔で答えていたが、そのうち苦痛になってチャリから離れた所でひっくり返っていた。 ◆テントの設営を終える頃、痛いのは腰でなく腹だと気付く。今日はすっごく暑くて休憩ごとに北海道限定ガラナなる炭酸飲料のリットル壜を何本も飲んだ、麦茶もごくごく飲んだ、リンゴも2個丸かじりした。腹が痛くなって当然だ。腹を抱えエビのように身体を折り曲げて痛みをこらえる。薬は正露丸きゃない。飲む。ひどい汗でほぼ1時間ごとに目が覚める。死ぬかと思った。夜中の1時半までそれが続いた。 ◆いいこと、悪いことが一日に集中した感じ。でも、おれのチャリ旅はあえなく今日で終わりかと思ったぜ。

[6日目]
8/1  乙部〜北檜山〜島牧(千走橋下ゲリラキャンプ)無料
     110.6km  666.2km
腹痛はおさまっていた。それどころか腹が減っている。昨夜の夕食用の飯を難民食いする。撤収もいつも通りテキパキ。奇跡だ。タフなもんだぜ、おれって。6時前、出発しようとしたら雨。20分ほどで上がったのでエイヤッとスタートする。いつものおれだ。いつもの脚だ。ホッとしたね。大成の道の駅で一服。ビッグバイクがおれの隣に停まる。今朝、函館に上陸し走ってきたという青年。北九州ナンバーだ。チャリとはフットワークが違う。旅先でチャリダーとの接触ははじめてといい、おれのチャリを隅々まで見てる。北海道に上陸してはじめて話す旅人がおれらしく初々しい。日本百名山を登り続けているという。北海道にはあとひとつ未踏の山が残っており、それを登るのが主目的という。いろんな奴がいるぜ。おれも昔は山屋だった。共通の話題もあり軽く盛り上がったな。

◆大成町から北檜山町まで、海岸沿いの道が途切れている。内陸の山道を行く。北檜山まで、だらだらだらだら5kmに渡ってひたすら登る。辛い。 ◆峠のてっぺんには必ずトンネルがある。そっから下りだ。今日まで道南を走ってそれはわかっていた。おれがトンネルを抜けると、対向車線にチャリ。手を挙げている。例のがんばれサインとは様子が違う。近付くと女性チャリダーやんか。珍しい。疲労困ぱいの顔で「まだ登らされますか」という。このトンネルを抜けたら丸々5km下りっぱなしだ、イケイケだ、と教えると一気に顔が咲いた。で「がんばりまっしょー」だって。いいな青春。こっからはおれも下る。おれだって嬉しい。 ◆昨日から気付いていたんだが、なぜかおれと抜きつ抜かれつする原チャリがいる。リトルカブ(スーパーカブの弟分)で旅するワカゾーだ。島牧への海岸に停車中のカブに出くわす。どうしたと聞くと、ほんの10分ほどカブを離れたら袋に詰めといた米がカラスに食い荒らされたといい、きれいな米だけをかき集めていた。大阪芸大の放送学科の学生。チャリと競り合うくらいのスピードがいい。面白い旅をしてるな。 ◆おれは今日は島牧をめざすといったら、学生くんもそこで作戦タイムだという。 ◆彼から遅れること10分そこそこ、チャリの速さにびっくりしてる。 ◆島牧の道の駅には名物レストランがあることは知っていた。水槽から好みの貝(生きてるんだぜ)を選び、テーブルで勝手に焼いて食べるというシステム。でっかいホタテ130円、でっかい夏ガキ150円、でっかいホッキ250円という破格料金。学生くんは1200円で腹いっぱい、おれは生ビール2杯と貝をめいっぱい食い2000円くらいか。旨さ爆発である。最高のディナーだ。ここで彼とはお別れ、内陸のキャンプ場をめざすという。 ◆おれはこの道の駅でゲリラキャンプを企んでいたが、腹いっぱいになると横になりたくなる。営業終了まで待てない。 ◆周辺をぐるっと偵察。道の駅脇の千走橋(ちはせばし)下は50張りぐらいのテントが張れそうな平地になっている。決定。ここにテントを設営し横になる。快適。ラジオの天気予報を聞こうとするがNHKがうまく入らない。しかし、ロシア語と朝鮮語の放送はよく聞こえる。北海道の僻地にいるんだな。

[7日目]
8/2  島牧〜寿都〜積丹(道営野塚野営場)無料
     143.5km 809.8km
昨晩、ヘッドランプの球が切れた。テントのフライも目止めシールが剥がれてきた。洗濯物もだいぶ溜っている。というか、パンツはもう後がない。どうしたもんか。岩内(いわない)の街はそこそこ大きいというので期待していた。岩内への途中、4kmに及ぶトンネルが連続する。この長さだとダッシュもきかない。緊張の連続。トンネルを抜けると岩内であった。あったぜ、電信柱にコインランドリーへの矢印。今現在はいてるパンツまで脱ぎ短パンいっちょで洗濯機を回す。同じ店内にある雑貨屋のおばちゃんが笑ってる。乾燥までして全身さっぱり。今度はヘッドランプをなんとかしなきゃ。道端で電気屋の場所を聞いてると、誰かが肩を叩く。昨日、大成で出会ったライダーの安成くん。また会った。彼はここでバイクのオイル交換だという。名物のニシン定食でも食おうと彼を誘う。

◆2kmほど内陸に入り、ホームセンターでLED1灯のヘッドランプを980円で購入、古いランプは捨てた。目止めシールの剥がれたフライはだましだまし使うとする。 ◆それにしてもトンネルが多い。1km2kmは当たり前、3km4kmというとトンネルダッシュもきかず、しんどい。けど、トンネル内では必死で脚を回す。全部のトンネルの長さを知りたいもんだ。おれが全力漕ぎした距離がわかるってもんだ。 ◆神恵内(かもえない)の青少年旅行村でキャンプと思っていた。風呂も近くにある。料金を聞くと、テント1張り500円プラス入村料が600円だという。いうに事かいて入村料とはなんだ。ざけんな。こんな金をおめおめ支払っては北海道のチャリダーのメンツがたたぬ。無料に慣れちまってるからな。で風呂上がりに再走行開始。日が落ちるまでに積丹(しゃこたん)まで届くか。 ◆6時ちょい前に野塚野営場に着いた。やった。砂地でのキャンプはまっぴら御免。道路寄りに草地を見つけテント設営。一人旅のライダーくんが「隣いいですか」とやって来た。彼も砂地のキャンプはヤだという。 ◆そのうち、ちょい離れた所にテントを張っていたライダーが明日の天気(予報)を知らせに来た。大荒れの天気のようだから今日中に食料を確保しておいたほうがいい。自分たちは停滞を決めたという。 ◆ライダー、チャリダー間のこういった情報交換は嬉しいが、途中おれは通りすがりの漁師に明日の天気を聞いている。「なあに、降らねぇよ」という漁師の言葉を信じたいが、一応フライの張り綱を補強して寝た。 ◆北海道の外周を走りだして1週間、途中の休憩時に要領よくフライを乾かしたり、漁師から明日の天気情報を聞き出したり、また距離に対する度胸が据わってきたというか、なんかいっちょ前のチャリダーになってきたような気がするな。

[8日目]
8/3  積丹〜小樽〜石狩(ライダーハウスKAZE)無料
     117.3km 927.0km
雨は降ってない。青空ものぞいている。天気予報は漁師に聞け、である。チャリダーの朝はシンプルだ。天気をみる。チャリの空気をみる。で行動する。まるで動物だな。さ走ろう。ところが、どっこい。積丹を過ぎ、余市へ向かう登りで雨が落ちてきた。ほんの数歩だけトンネルに入り雨宿りだ。長いトンネルを抜けると雨が上がっている。また降る。そんな繰り返しであるが、本気で降るようではない。レインコートも着ないまま、余市の道の駅に到着。水を補給。札幌の知人菅原さんに電話する。この旅のことは出発前にメールで伝えてある。懐かしい声「札幌に寄らないの?」といわれるが、ここで菅原さんの顔を見たら里心がつく。連泊でもしようものならなおさらである。今回は旅を優先する。旅が終わった時点で連絡すると伝える。

◆小樽は坂の街、というがひどい登りだった。チャリダー泣かせのだらだら登りが3kmくらい平気で続く。下りは気持ちいいがアッという間だ。ま、近頃、登り坂を見てもひびらなくなったな。こんなの気にしてたら北海道は走れない。毎日のことだからな、でも。 ◆小樽から銭函(ぜにばこ:すごい地名があったもんだ)へも登る登る。でもって下る下る。ハードな区間だ。 ◆北海道のチャリ旅で一番恐れていたのは風だ。障害物がなにもない所で向かい風にあったらえらいこっちゃ。今そのえらいこっちゃがはじまった。石狩湾からの風をまともに受ける。漕ごうが押そうがチャリは進まない。 ◆『えっさ、えっさ、えっさほいさっさ、おやじのチャリ乗り、ほいさっさ、峠七坂きつい道、振りわけ荷物ぶらさげて、それ、やっとこどっこい、ほいさっさ、ほーいほいほい、ほいさっさ』童謡おサルのかご屋がいつしかおれのテーマソングになった。 ◆石狩浜キャンプ場に着くとすごい光景に出くわした。海水浴客のテントが風でみっつよっつ海の方へぶっ飛ばされている。なんじゃこれぇぇぇ、である。駐車場の整理員に木が植わっている場所を聞くが、ここには砂浜っきゃないという。 ◆今日はこれ以上は進めない。だだっ広い駐車場を移動し、少しでも条件のいいテント場を探す。浜の右外れまで行くと、ちゃっこいログハウス風の建物がふたつあり、ライダーハウスKAZEとの看板。風の日にKAZEとは話が出来過ぎだが中をのぞいてみる。ライダー2名、泊れるかと聞くと管理人もおらず無料だという。おれはライダーハウスをあまりアテにしていなかったので、ここはチェックからもれていた。決まり、緊急避難だ。 ◆近くに番屋の湯といういい温泉があり、飯と風呂をいっただきますだ。 ◆ミニハウスに髭剃りとデジカメを充電セットし、チャリのサイドバック2つを外し食料調達に出かける。チャリってこんなに軽いんだ、と改めて驚く。◆ライダーが3人に増えてる。ちと狭い。隣のミニハウスの入り口には女性ライダー優先とある。まだ誰もいないようなので、普通ライダーは何時頃まで行動するんだ、と彼らに聞くと「6時過ぎたら走りたくないっす」との返事。もう6時をとうに過ぎてる。だったらおれは隣へ行く。もし女性ライダーが来てもおっさんなら罪がないだろ。若い諸君らがいたら問題だが。我ながら、なかなか見事な屁理屈だ。かくして、ミニハウス一棟を独占して熟睡である。

[9日目]
8/4  石狩〜浜益〜留萌(黄金岬キャンプ場)無料
     122.5km 1,049.6km
朝7時過ぎ、35kmくらい走った時点で腹が減ってきた。おれはいつもこうだ。この程度の距離は文字通り朝飯前にやっつける。これがワカゾーとの距離の違いになる。ぜんぜん辛くなんかない、いい習慣だ。厚田村の夕日の丘公園(朝日がきれいな)で朝飯だ。一人のチャリダーがテントを撤収してる。話すと、千葉スタートで日本一周中の20才の青年、久保田くん。今日は留萌(るもい)までかせぐという。おれと同じだ。今朝おれは石狩からだというと、「まいりましたと」いう。おれより30km短い走行予定だ。またどっかで会うだろう。昨日までに比べちっとは道路状況がいいはずだ。おれは今日そうシャカリキにならなくていい。

◆ミステリーゾーンに遭遇する。どう見ても下っている道なのだが、登りなのである。はじめ、おれはブレーキシューがリムにくっついたまま固まったと思い、チャリを降りて前後ブレーキを点検したもんだ。さんざんの登りをやっつけた後だからそう思うのか。ほんとヘンだ。久保田くんが追い付いてきた。二人で道端に腰を降ろし、対向車線の縁石を眺めるが彼も「下ってますよね」という。ええい、くそ、登りゃいいんだろ登りゃ。 ◆途中、与太話の最中、風呂の話題になった。久保田くんはちと風呂にご無沙汰のようだ。何日ぐらいだと聞くと「家を出てから、今日でちょうど30日目です」という。ぎぇぇぇぇである。このクソ暑いのに。おれは突然おとうさんになる。馬鹿もん、今日おれが風呂に入れてやる。地図を見るが今日の走行区間には温泉がない。銭湯もない。明日、天塩まで距離をかせぐんなら鏡沼キャンプ場に来い。ここで温泉をゴチする。そう約束する。ったく。 ◆久保田くんは留萌のみつばちハウスARFに宿泊するという。ここは蒲団が用意されてることで有名なライダーハウスだ。たまにはいいだろう。おれはキャンプの方が気楽なので予定通り黄金岬キャンプ場泊とする。 ◆単独チャリダー同士は、どんなに気が合っても行動中は一緒に走らない。お互いの走行ペースがあり、それを尊重するからである。休憩時なら歓談もするし情報交換もする。自立してる者同士。なかなかの習慣だと思う。 ◆今日のトンネル地獄は横綱級である。トンネルの中で対向車の通過を10分ほど待たされるという体験もはじめて。 ◆久保田くんはおれの200mくらい後方を走っていたと思う。おれたちを追い抜いた(であろう)白いワゴンが前方に停まり、おれがそこを通過する時、おばちゃんが「暑いけどがんばって」とお茶のペットボトルを差し出す。もちろん久保田くんにも1本。きちんとしたお礼をいう間もなく、おばちゃんは手を振りながら行っちゃった。久保田くんは「こんなことってあるもんなんですねぇ」と狐につままれた表情。チャリにくっ付けたボトルのぬるい水に比べたら、冷たいお茶は甘露である。二人とも一気飲みである。 ◆黄金岬に近付き、海の家のおばちゃんにキャンプ場の場所をたずねる。ついでに履きっぱなしのゴムゾーリの予備を仕入れる。400円。ポケットから小銭を総動員すると374円出てきた。足りないので財布から1000円札を出すと、おばちゃんは「それでいいよ」と370円だけ受け取る。「いい旅しなさいね」だって。このせちがらい世の中で北海道には奇跡が多すぎる。 ◆北海道へ来てはじめてチャリのメンテをする。明日からも元気に走れ。 ◆黄金岬では日本一きれいな夕日が見られるという。で黄金岬。ま、北海道の日本海側ではどこでも見事な夕日が拝めるのだが。日が落ちる頃、夕景でも撮ろうとカメラを持って立ち上がると、4人のギャルが「おじさん、チャリでどっから来たの」と聞く。苫小牧からだというと、気絶しそうなフリをする。ぽつりぽつり話をしてると、みんな拓殖短大保育科の19才、なかなかの美形揃いである。けっこー話をしたな。父親はみんなおれより歳が若いって話。おれはどっから見てもまともにゃ見えないって話。普通に話せるおじさん(おれ)はチョー珍しいって話。ポーイフレンドは頼りないって話。今日4人揃って4人のおじさんにナンパされた話。そのおじさんって幾つくらいだと聞くと28か29か30才くらいかな、だと。んじゃ、おれはご先祖様か。 ◆8時半を回った頃「おじさーん起きてるぅ」ときたもんだ。さっきのギャルたちである。おれはすっかりオモチャにされてる。「一緒に写真撮ろおぉぉぉ」だと。あたりは真っ暗だ。そいつらの持ってる紙箱カメラじゃ話にならん。じゃ、おまえさんたちを忘れないように、おれのデジカメで撮ろう。おれも脳天気なもんである。(その写真はおれのデジカメに確かに記録されている。あいつら北の牝キツネじゃなかったようだ)

[10日目]
8/5  留萌〜羽幌〜天塩(鏡沼海浜公園キャンプ場)無料
     127.8km 1,177.4km
ゆうべはかなり涼しかったので爆睡した。チャリ旅10日目ともなると恐いもの無しである。霧などチリほど気にしなくなる。苫前(とままえ)に入る頃、すごい霧、それが小雨に変わる、また止む。羽幌(はぼろ)、初山別(しょさんべつ)あたりはかなり路面が濡れている。さっきまで本気で降ってたようだ。ラッキ。久々に涼しい感覚を味わう。道北の空気である。トンネル地獄からは完全に解放された。ところで、おれの旅だがけっこー距離がいけてる。急いでいるわけでもなんでもないが、とにかく走れるのだ。次の村、次の道の駅、目の前のコーナーの先、未知との出会いがおれの五感を刺激しまくり走るのが楽しくってしょうがない。多摩川サイクリングロードではこうはいかないな。しかし、走り方にはおれのクセがあるようだ。朝飯前の走行は絶好調、昼くらいにおおいにダレる、3時を過ぎるとこのままいつまでも走れそうな感じになってくる。だから、今日までよれよれになってキャンプ場到着なんてことはない。長距離走の基本ができてきたようだ。いいぞいいぞ。

◆遠別(えんべつ)に入った頃から急に眠くなる。脚を回しているのにだ。こんな体験ははじめてだな。トンネルが無くなると緊張感が薄れ、そのせいだろうか。睡眠はたっぷりのはずだ。駐車帯の縁石に横になったら20分ばかりほんとに寝てしまい、肌寒さで目が覚めた。 ◆外人の女性チャリダー4人。例のがんばれサインは北海道で覚えたのだろう。揃って恥ずかしそうにVサイン、いい感じだ。おれはガッツポーズでそれに応える。 ◆いるとは聞いていたが、ほんとにいた。ママチャリで旅するワカゾー。前カゴに荷物をてんこ盛り。後ろの荷台はこてんこてん盛りである。でも決して苦しそうな顔なんかしていない。ニコニコ顔だ。こんな青春もある。カタログ文化に毒されたシティあんちゃんなんかより100倍好感がもてるな。 ◆天塩まであと一息。遠別の道の駅で長い休憩をとる。と一人のチャリダー。スポルティーフにわりと小さな荷物。素朴な東北訛り、でも岡山の大学生だという。稚内の友人をたずね帰りは飛行機なので輪行するという。 ◆青いチャリに乗る日本一周くんのことを聞くと、もうすぐ来ますよ、とのこと。久保田くんをここで待つ。 ◆短い距離なので天塩まで3台一緒に走る。珍しい光景だな。 ◆鏡沼海浜公園キャンプ場は、おれが知るかぎり一番充実してるキャンプ場だ。使い放題の洗濯機は炊事棟に2台置いてあるし、シャワー棟もある、トイレは水洗だ。で無料である。温泉もすぐ側にあり、久保田くんの31日ぶりの入浴を待っている。むふ。 ◆北海道に多い茶褐色のいい湯だ。おれは早風呂なので20分ほどで風呂を出て、休憩室でビールをくらう。ロング缶4本くらう。1時間半後、久保田くんが別人のように爽やかになって現れた。2度くらい身体を洗っても石鹸の泡がたたないんですという。きったねぇ。4度ほど身体を洗ったという。 ◆テント前で3人でだべってると、おいおい寒いじゃないか。他のキャンパーを見るとフリースを着てる人もいる。道北にいるんだ。
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